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「SSM」と言えばダイキン

「なぜなぜ5回」と言えばトヨタ、「SSM」と言えばダイキン。個人的にはそう思っている。そのダイキン工業のSSMを陣頭指揮で引っ張ってきた岡田慎也さん(同社常務、空調生産本部副本部長、滋賀製作所長)が9月3日、日科技連主催のシンポで基調講演(東京会場)をする。聞かねば。

SSM(ストレス・ストレングス・モデル:不具合発生のメカニズムを未然防止に活用するための知識構造モデル)は、あるライン、ある製品、ある機能だけで導入して使うこともできるし、事業部、工場、さらに全社にまで展開して使うこともできる。前者の好例が日産自動車パワートレイン開発本部だ。部品の共通性が高く、設計検討の頻度が多い「締結・シール機能」に絞ってSSMを導入している。一方、後者の好例はダイキン工業滋賀製作所(ルームエアコン工場)だろう。この工場は、5年前にSSM開発者・田村泰彦さんに出会って以来、SSMに没頭している。最初は工場内の1チームに適用して始めたのだが、やがて商品関連全部門に導入することになり、ついに業務改革の柱としてSSMを位置付けるまでになった。

SSMの最大の特徴は、不具合情報を「原因→結果」の最小ユニットに分解し、それを必要な分だけ組み合わせて再利用するという仕組みにある。この最小ユニットをSSMでは「分節」と呼んでいるのだが、取り組み当初、ダイキン工業では分節の数を成果指標に掲げていた。つまり、分節数が増えると、社内で「えらい!」と評価されるわけである。これには訳がある。「分節数が100件を超えたあたりから、他の不具合モードとの関係が見え始めます。因果連鎖をどんどん書き出していくことができるようになり、取り組んでいる側がその効果と可能性に覚醒し、俄然やる気が起こってくるのです」(岡田さん)

100分節を超えるとサプライズが起きる。だから、どのチームも100分節作れるまで頑張ろう。SSMが社内に馴染むまでは、これが指標になった。非常に分かりやすい定量目標である。

工場内のいろんなチームがこの目標に取り組んだ。原因→結果のつながりにやたら理屈を付けて議論ばかりしたがるチームは、100まで行くのに時間がかかる。すると、途中でだんだん気力がうせてくる。一方、とにかく100分節を達成することに邁進したチームは、すぐに100まで到達し、そこで覚醒を経験して、もっとSSMにはまるようになる。チームによって格差が出たそうだ。

こんな話を聞くと、学生時代を思い出す。「とにかく小説でもエッセイでもいいから、英語の単行本を1冊読み通してみろ」「この分厚い『チャート式 数学』の参考書を1冊全部やり通せ」とかを、学校の先生に言われたことはないだろうか。理屈はよく分からないが、実際最後までやり通してみると、急に視野が開けてその分野が分かるようになり、自分が賢くなったような気分になる。ある閾値を超えると効果が出る勉強法なのだろう。「100分節」は、ダイキン工業にとって、SSMの閾値だったのだ。

勉強と言えば、自分の勉強部屋などに、スローガンとか計画表とかを貼り付けて、自分を鼓舞させた経験はないだろうか。ダイキン工業では、SSM活動でこれをやっていた。チームごとに、方針や活動計画や分節数の進捗度合いなどを表やグラフなどにして「SSM活動板」と言われる掲示板に貼り出していた。これもヤル気をそそる手法だと思う。

このようなチームごとの取り組みは、いつまでもチームごとに分散したままではなかった。例えば、電気部品であるリモコンの筐体部分と、構造部品であるエアコンのグリルとは、部品としては異なるが、樹脂成形として共通の作業工程を持っているので、過去の不具合事例でも共通の要素を持っている。それらの要素は、SSMをやることによって構造化された知識として整理され、それが構造のための樹脂設計や部品の配置設計に反映されることになる。電気部品チームと構造部品チームのSSMがマージするわけである。

このように他部署と分節がつながり出すことを、ダイキン工業では「知識のジャンプ」と呼んでいる。このジャンプは、SSMを商品に関わる全部門に展開すれば、全社部門間でジャンプが起きる。さらに、海外売上比率が6割を占めている会社なのだから、SSMを日本にとどめず、英語を使って海外にも展開すべきだろう。そうすれば世界規模でジャンプが起きる。そんな議論が、私が取材した当時の2008年10月には行われていた。今のダイキン工業のSSMはどこまで進んでいるだろう? 岡田さんの話が楽しみだ。
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このページは、中尾優作が2010年8月 1日 21:53に書いたブログ記事です。

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