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2010年8月アーカイブ

久米均さんのISO観(4)

1993年11月17日に実施した久米均さんへのインタビュー記事の連載最終回(第4回)。今回は、顧客による供給者への第二者監査とISO 9001による第三者審査との関係がテーマである。当時は「供給者の品質システムの監査については、顧客自らが監査する第二者監査を、できる範囲内でISO 9001による第三者審査へ移行して欲しい」というJABトップからの強い要請が産業界に伝えられていた。なお、この頃は仕様書がISO 9001/9002/9003の3種類ある1987年版の時代である。


ISO 9001が監査スタイルのベースになり
二者監査の数が減っていく


質問:
現状では、独自に供給者監査をしている購入者がたくさんあります。供給者側がISO 9001の審査登録をしていてもです。「この規格だけでは甘い」というわけです。すると、供給者においては、従来から行われていた購入者側の監査に加え、ISO 9001の審査が加わり、コストが二重にかかることになります。これは困ったことではないでしょうか。

久米:例えば、最初に取引を始める時は、やはり自分で取引先を見ないとね。それこそperformanceの問題もあるし、どういう設備で、どういうふうに作っているかは、自分で行って調べてみなくては分かりません。最初の評価というのは、まず相手の工場を見に行くことです。これは、ISO 9001の審査ではダメなんです。あるいは、相手が不適合を出した時ですね。これもおそらく、ISO 9001の審査ではダメでしょう。購入者側では「あそこの工場はいったいどのような品質管理をやっているのか見に行って監査しよう」ということになります。ですが、このような特定の状況以外の場合で、技術的にも相手のレベルがよく分かっていて、一応信用もでき、わざわざ自分で見に行く必要もない時は、ISO 9001の審査で供給者の品質システムの維持を確認するということになるでしょう。ですから、ISO 9001による審査登録制度を導入したからといって、第二者(購入者)の監査がなくなるとは思えない。

質問:二通りの審査が、このまま続くわけですね。

久米:ビッグスリーの場合も、「品質改善」なんていう、ISO 9001規格にない要件を取引先企業向けの品質管理要求事項(QS-9000)を出してきています。「品質改善については、ISO 9001の審査ではできないので、自分たちでやる」と言っているわけです。ただ、審査の基盤はISO 9001規格になっています。また、ビッグスリーが3社共通の1つの規格を作ったことはすごいことで、これはISO効果かもしれない。3社を相手にしていた供給者側からすれば、今まで3回監査を受けていたのが、共通部分に関しては1回で済むのです。だから、第二者による監査が厳密にISO 9001の審査に置き換わることはあり得ないけれども、一般的には(二者監査の)数は減るんじゃないか。ビッグスリーの場合のようにね。それに、監査スタイルがISO 9001規格一本に定着してくるでしょう。お客さんから別の要求があれば、それはそれでプラス・アルファする形で用意しなければならないが、そのほかはすべて、ISO 9001規格で共通になっていく。そういうメリットが出てくるでしょう。▼(この連載はこれで終了です)
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第13回是正処置WS

審査道無風流主催の第13回是正処置ワークショップ(WS)に久しぶりに参加。今回は主に「監査所見の評価研究」について議論された。題材は、え゛...iso??さんが自組織の内部監査の所見に対する評価表。これをもとに、ほぼ終日議論を行った。参加者は家元さん、師範さん、え゛...iso??さん、しょうさん、中尾の5人。

え゛...iso??さんのところの内部監査は、毎年7月にP(Plan)、10月にD(Do)、2月にA(Act)焦点を当てて実施している。今回の題材となった監査所見の評価表は、7月に実施されたPlan監査で内部監査員が示した監査証拠とコメントに対し、監査事務局が自組織の評価基準に基づいて点数評価を行った一覧と、被監査部署からの監査所見に対する意見・要望や、監査事務局からのアドバイス・コメントも
併せて掲載している。

評価項目の中でユニークなのは「チャレンジ項目(問題事象の発見にとどまらず、問題をPDCAの流れの中でとらえているか、など)」。さすがにこの項目で「良」(良・可・不可の3段階評価)の評価はなく、「可」が2件のみ(評価対象96件中)だったが、このようなことができる内部監査はすごいと思う。

議論の中で印象に残った会話。

家元さん:「え゛...iso??さんの組織は、"要するにできたのか・できなかったのか"という『マルバツ文化』が強いと感じていたので、、従業員がどのようにして心の安らぎを得られるのかと思っていたが、このような段階的なプロセス評価では従業員の気持ちも変わってくるのでは」

え゛...iso??さん:「従業員の監査では『未達成』という結果を咎めるのではなく、目標が達成のためのプログラムに具体化されているか、そのプログラムが計画通り実施されているかという『プロセス』を、監査員と一緒に考えるのだというように従業員に受けとめてもらえると楽になると思う。目標レベルでの必要性は分かっていると思うが、それを具体化するプロセスについては理解していない場合がある。だから、監査の時に、どこのプロセスが問題になっているかを一緒に見ていけるといい」

師範さん:「監査で個々の現象をバラバラで見ていても、それをプロセスとして組み上げていかなければならない。最終的にプロセス監査の報告書ができていることが重要だ」

ここでプロセス監査のためのツールの話題として、AIAGのガイダンスマニュアルに記載されている、プロセスアプローチ、タートルモデル、オクトパスモデルを提示しながら、家元さんが解説。特に最近、やたら単行本や雑誌に掲載されるタートルモデルに対して、批判的な意見が出る。

師範さん:「タートルモデルは内容をよく理解しないまま、使用されている場合が多い。監査の準備段階として使うには、いいツールだと思うのだが」

え゛...iso??さん:「優れたモデルだとは思うが、我々の組織・事業の規模・状況や内部監査のレベルでは使いこなせない。また、一般論になるが、このような『モデル』を導入することで、モデルを使うこと自体が目標となる危険性があるように思う」

ここで、話がISO 10002(苦情対応マネジメントシステム規格)に飛ぶ。家元さんが最近ISO 10002のプライベート認証の案件が増えていると報告。
え゛...iso??さんは、うちとしてはISO対応レベルの仕組みは構築しておきたいが、認証を取ろうとは思わない、認証を取得するのは、組織の側に、ISO 10002レベルの顧客苦情対応は実施できているということの保証を得るという「保険」の意味があるのかもしれないと述べ、「そういえば、ある消費者団体が企業対応を調べるアンケート調査を行っており、そのアンケート項目の中に『ISO 10002対応をしているか?』というのがあった」と述べた。

家元さんが雑談ついでに、クライスラーが6月に発行したサプライヤー向けの要求事項の文書には、ISO 14001ベースの固有要求事項が付加されていると報告(
Chrysler-specific requirements for ISO 14001)。午前の部はここで終了。

午後の最初の話題は、仕事に対する姿勢の問題。

家元さん:「例えば、マネジメントシステムを構築する場合、あれこれの本の解説や他の組織の実践をそのまま引っ張ってくるタイプ(一方的に教わろうとするタイプ)の人と、そうではなくて自分で問題を考えて、そこから発展させようとするタイプの人がいる」

え゛...iso??さん:「システムの形式を整えるのが『仕事』なのか、そのシステムで成果をあげるのが『仕事』なのか、という発想の違いがあるように思う。目標型のマネジメントの場合、どのような『美しい』システムを構築しようが、そのことで目標を達成できなければ何の価値もない。しかし、目標達成を支援するリスクマネジメントの場合、その仕組みを作ったことで免罪されている文化がある。例えば、現在事業継続マネジメントシステムを構築中だが、『大地震が発生することはよもやあるまい』というのが事務局の本音だったりする。また、万が一地震が発生しても『想定外の大きさでした』で許してもらえるだろうなどという甘えもある。このような中でプロセスやシステム構築が自己目的化することの弊害は大きいと思う。しかし、一方で、成果をあげることのみでプロセス・システムを考慮しない『偏った目標志向』も問題であり、組織には、目標型マネジメント(よいことをする仕事)とリスクマネジメント(悪いことを防ぐ仕事)の双方が必要ではないか。人間もそう。リーダー型のタイプとスタッフ型のタイプがある。その両方を兼ね備えているほうが、もちろんいいのだが」

師範さん:「あなたの場合は、どうだったのか」

え゛...iso??さん:「ISO 14001に取り組む時に、他社がやっているからとか、とにかく認証が欲しいからとかではなくて、ISOを使って環境活動をやると、顧客や従業員にとってこれだけいいことがある ・・・ そんなシステムをつくることを励みにしてやろうと自分なりに『目標』を設定した。目的・目標を明確にして、そのためにISOをツールとして使っていこうという意志がないと、使えないと思う」

師範さん:「私が工場にいた頃は、それまでのQMSがまったく役に立たないと思っていたので、自分がQMSを担当するようになってからは、まず『
実際に使えるものにしよう』と考えた。規格を理解し、やれているところとやれていないところを照らし合わせるというギャップ分析をやった」

え"...iso??さん:「要は、課題とどう向き合うかだと思う。上から構築するよう指示されたから構築するという向き合い方なのか、システムを使って会社をよくしたい、現場を楽にしたいという視点でシステムを見るのか」

師範さん:「自分で課題を拾ってくる。すると、すぐに次の課題も見つかる」

ようやくここで本論に戻る。WSのメインメンバーである道友さんが今回は欠席のため議論ができなかったのだが、道友さんが掲げている次のテーマとして「是正処置のぐっど・えぎざんぷるとは? 良い是正処置の事例から成功のポイントを抽出する」というのがある。そこで、家元さんが、
え゛...iso??さんに「ぐっど・えぐざんぷる」として、今回の所見の評価システムを生かした「是正処置の評価システム」を構築・運用することを提案。「是正力を強化し、再発防止ができる組織にするというのは、当社の経営テーマでもあるので、やってみたい」と快諾。ここで言う「是正処置の評価システム」とは、以下の是正処置プロセスについて、ちゃんとできているかをレビューするもの。ただし、所見の評価システムは成果物としての所見の「製品検査」であるが、是正処置評価システムは是正処置プロセスの評価システムでもあるため、工夫が必要となる。


【是正処置プロセス】

1.問題の発生
2.問題の把握、認識
3.是正処置の必要性の評価

再発の可能性、影響、対策費用の見積もり

4.発生状況の調査

手順、想定の内・外

5.原因の究明

発生原因
流出原因
6.再発対策
対策案の検討と選択
7.再発防止効果、費用対効果


え゛...iso??さんのところの監査所見の評価表は、マネージャーからも評価されているという。

え゛...iso??さん:「事務局の顧客(事務局が構築・維持するシステムの顧客)はマネージャーだ。事務局は現場に対して、『あれやってください。これやってくださいとセールスはするが、マーケティングをしていない場合が多い。事務局は味方を増やさなければならない。味方を増やすためには、相手に関心を持つことが必要になる」

師範:「自分が相手に関心を持つと、相手も自分に関心をもってくれる」

え゛...iso??さん:「味方を増やす努力もしていないのに、『トップがわかってくれないとか言っているうちはダメですね」

ここで、遠方から来ておられる、
え゛...iso??さんはお帰りに。事務局論は継続論議。

中尾:「アイソスでこの間、『三代目事務局の時代
という特集をやって、多くの事務局の方に寄稿してもらったが、先代事務局に対する評価が非常に低い原稿が散見された」

師範:「認証を取るために取り組んだ事務局が多かったからでは? 私もA級戦犯なんて言い方してるけど(笑)」

しょう:「私は、事務局は最終的にはいらないと思う。長年事務局をやっている人は、みんな最終的には自分が過去に作ったシステムは壊して変えたいと思っているのではないか。ただ、実際にはなかなかそれができない。現場では、『今のままでいい
という気持ちが強いからだ」

師範:「いそいそフォーラムで長年事務局をやっている人は、みんなそう思っているのではないか。ただ、事務局がなくなっても、規格が分かる人が組織に1人は必要。それは管理責任者がやればいい。日本では管理責任者は単なるお飾りになっている」

このあとは、ビールを飲みながらの懇親会モード。なので、覚えていない。
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久米均さんのISO観(3)

1993年11月17日に実施した久米均さんへのインタビュー記事の連載第3回目。今回は国際的な相互承認の問題について。ポイントは「購入者が審査をどう評価するか」である。国際的な制度づくりのむずかしさが予見されている。


国際的な相互承認をいかに進めるべきか

質問 ISO 9000規格による審査登録制度において、国際的な相互承認に向けた動きが活発に行われていると聞いています。

久米 国際的な相互承認は、認定機関レベルで、かつピア・エヴァリュエーション(peer evaluation)の方式で行うということです。

質問 この結論について、どう思いますか。

久米 こういう方法しかないでしょう。もう1つの方法として、ISOが何も関与しないで、審査登録機関の間で自由に相互承認をやるという方法があります。そうすると、力のあるところがお互いに相互承認の協定を結んでいくでしょう。私は最初のころ、そういう方法を想定していたので、当時のJMI(現在のJQA)には、さんざん発破をかけました。国内もいいけど、国際的な動きもやって欲しいとね。実際、森田允史さん(取材当時はJQA理事、現在はJ-VAC代表取締役)はよくやってくれました。

質問 今後は、認定機関どうしの相互承認が広まるのでしょうか、それとも審査登録機関どうしの相互承認が力をつけてくるでしょうか。

久米 実際は審査登録機関どうしのほうかもしれない。
ピア・エヴァリュエーションでやって、本当のことがわかるという問題があってね、購入者が「△△審査登録機関でなければだめだ」と言い出さないとも限らない。「あそこじゃ、だめだ。ここのを受けろ」ってね。そうすると、いくらISOやIAF(認定機関の国際的なフォーラム)で相互承認をしているからといっても、購入者のほうでは「あそこはだめだ」と言い出したら、それでつぶれてしまうわけです。

質問 認定機関どうしの
ピア・エヴァリュエーションを購入者がどう評価するかですね。

久米 国際的にやるなら認定機関どうしの
ピア・エヴァリュエーションという形でやらざるを得ない。というのは、審査登録機関は世界で500ほどありますから、とても1対1でなんてできない。ただ、そのようにピア・エヴァリュエーションでやって果たして効果があるのかどうかは、よく分からない。購入者の中には、「そんなものはだめだ」と言い出すところもあるかもしれない。事実、アメリカのビッグ・スリーは、ISO 9000規格にプラス・アルファを付けて、「自分たちが認めた審査でなければだめだ」と言っています。それはそれで私は1つの見識だと思います。ISOからすると面白くないかもしれないが、購入者からすると、当然だという気がしないでもない。自分が知らない審査登録機関が審査したものを、どこまで信用できるでしょうか。ただ、みんながこのようにやり出すと、この制度はつぶれてしまいます。
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久米均さんのISO観(2)

前回に続いて、1993年11月17日に実施した久米均さんへのインタビュー記事の抜粋を掲載。本稿で久米さんは、日本企業のグローバル化に焦点を当てている。人間的なつながりだけでやってきた日本の経営システムは海外では通用しない。となると、どうしてもISO 9000のような論理的な規格が必要になってくる......


ISOのような論理的な規格でないと
海外では通用しない


質問 ISO 9000規格はすでに世界50数カ国に翻訳され、企業の審査登録も急ピッチで進んでいます。これだけ短期間でグローバルに普及した規格も、ちょっとないのではありませんか。このような現象の要因は何でしょうか。

久米 それは2つあると思います。1つは、品質が非常に重要であることをみんなが分かってきたからです。モノが豊かになってくると、みんな良いモノを欲しがる、良いモノを作ることができる企業は利益が出る、そこで、品質が非常に重要視されるようになってきた。欧米は日本の発展に対し、その要素の1つに高品質があることに注目した。また、ASEANや開発途上国は日本の発展を見て、品質が非常に大事であることを理解するようになった。そういうベースがあって、ISO 9000シリーズが出てきたのだと思います。それともう1つは、欧州の経済統合です。これが直接の引き金です。日本なんかどちらかというと、欧州に輸出できなくなると一喝され、仕方なしにやっているわけです。だから日本の企業でも、日本の審査登録機関ではダメで、欧州の審査登録機関の審査を受けないと通用しないと言っているところもある。これが事実になると非常にまずい。まさにこれは「非関税障壁」になってしまう。これからが第2ラウンドです。国際的な相互承認をやっていかなければならない。

質問 ISO 9000規格は、日本の企業がとちらかというと苦手な、文書化の作業を要求します。これは日本の経営システムにこれまで欠けていた要素を補うという意味で、普及を促す要因になるのではないでしょうか。例えば、「終身雇用」の問題。終身雇用ゆえに、人に頼ったシステムになってしまい、その人がいないと誰もその仕事ができない。今、不況ということもあって日本の終身雇用制がぐらついています。いつまでもこの制度を保つことはできないとすれば、日本もそれに対応して社員の役割と権限を明らかにし、一人一人のやるべき仕事を文書化して、マニュアルに従えば誰でもその仕事ができるようにしておく必要がある。それはISO 9000規格の領分だと思うのですが。

久米 むしろね、私はもっと重要な問題があると思う。日本人だけの企業というのはだんだん減ってくる。日本の企業はグローバルになっていくる。私は、1993年5月にマレーシアのクアラルンプールで開催されたPASCに出席した時、まる1日、当地の日本企業を見て回ったのです。その時、日本企業の進出の激しさに驚きました。クアラルンプール付近だけで、日本からの進出工場が1,000近くもあるんです。大手の企業では事業所だけで10カ所以上もあるところがあります。ということは、もうそこでものを作っているんですよ、本当に。海外で作れるものだけを持って行って、作るのではなくてね。クアラルンプールだけでもそうなんです。他の地域を考えると極めて多くの日本企業が世界中に進出しているわけです。
つまり、企業自体がグローバルになってきているんですね。すると、人間的なつながりだけでやっていくという、今までの日本的な経営システムでは行き詰まるでしょう。そのためには、ISO 9000シリーズのような論理的な規格できちんとやらないと日本では通用するが海外では通用しなくなる。そういうことを、私はクアラルンプールの日本の工場を見て実感しました。おっしゃるように、日本全体の雇用形態は変わってくるでしょう。これは経済的な必然性なんでしょうね。しかし私は、本当は、終身雇用というものは、できれば温存しておいたほうがいいと思っています。

質問 どうしてですか。

久米 やっぱり、仕事をよく知っている人が一生懸命やれば、効率が高いですよ。もちろん、終身雇用でぬるま湯に浸っているということじゃあ、まずいけど。そうでなければ大変効率が良い。しかし、これが温存できるかといえば、むずかしい。ただ、私の知っている欧米の優良企業は終身雇用的ですよ。AT&T社、ヒューレット・パッカード社、コダック社、デュポン社など、みんなそうです。私の理解では、いい企業というのは終身雇用的ですね。▼
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久米均さんのISO観(1)

19931117kume.jpg1993年11月17日、某新聞社の編集マンだった頃、当時東京大学の教授だった久米均さんにISO 9000の規格及び制度について話を聞いた。ちょうど同年11月1日に日本の認定機関としてJABが設立され、久米さんはその認定委員会委員長に就任したばかりだった。この時の取材記事を抜粋して何回に分けて紹介したいと思う。
(写真は取材当時の久米さん:東大の久米研究室にて)

今回の久米さんの話の中に出てくる「諸刃の剣」「紙くず製造システム」「義務教育」といった言葉は、久米さんがISOの比喩として最初に使ったかどうかは分からないが、久米さんが使ったことでポビュラーになったことは確かである。


ISO 9000は「諸刃の剣」


質問 久米先生のISO 9000規格に対する評価はあまり高くないように思えます。1992年4月に東京で開催されたPACS(アジア地域の標準化会議)では「品質のベースは固有技術であり、その技術を改善するにはTQCが、そのシステムを維持するにはISO 9000規格が有効」と発言されていますし、また、1993年に発行された著書「品質による経営」(日科技連出版社)の中でも、ISO 9000規格について、「static(静的)で発展性に乏しい」「新しい品質システムの創造という観点からは限界がある」といったコメントをされています。ISO 9000規格は「維持」には向いているが、「発展」には向いていないということでしょうか。

久米 私は、ISO 9000規格を否定しているわけではないが、これだけで品質が良くなると思ったら間違いです。これだけではだめです。日本人は隣を見て、慌ててワーッと飛びつくところがあるが、第二次世界大戦から今まで営々と築いてきた日本の品質管理を放り出して、すぐに新しいものに飛びつくというのはまずいと思う。ISO 9000規格も一つの道具ですから、いかに上手にこのシステムを作り、使うかというところが大事なのです。これに、うーんとお金と人をかけたら、いい製品ができるかというと、そうじゃない。あくまでオーバーヘッド(間接経費)ですからね。間接というのは「諸刃の剣」なんです。上手にやれば非常にシャープだが、変なことをやるとラインのみんなが迷惑する。うっかりすると、「紙くず製造システム」になってしまう(笑)。

質問 「ISO 9000規格だけではだめ」という点を、もう少し説明していただけますか。

久米 私はデミング賞の審査を20数年前からやっていますが、これは大変勉強になります。企業の叡智がすべてそこに出てくるからです。ISO 9000規格の審査とデミング賞の審査の違いは、前者はまず規格があって、その規格通りにできているかどうかを審査しますから、受審するほうは比較的簡単なんです。試験問題があって、その中から出るんですから(笑)。ところが後者は博士論文試験のようなものです。何を書いてもいいんです。もちろん、評価の仕方も主観的な部分がある。しかし、すばらしい論文が出てきますね。企業の叡智が出てくる。私はそれを大切にしたいのです。ですから、ISO  9000規格は、まあ「常識」ですね。「義務教育」(笑)。これを目安にしてもっと自分たちに合った、もっと効果的なものを作らないとね。▼(取材日:
1993年11月17日)
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日本適合性認定協会(JAB)は8月5日、2010年6月末時点での国内マネジメントシステム認証組織件数の集計結果を発表した。この件数にはJABから認定されていない認証機関による認証組織件数も含まれている。JAB発表の一覧表では、JABから認定された機関順に並べられているが、本ブログでは認証件数の多い順に並べてある。この一覧表をPDFで欲しい方はこちらをクリック。

この一覧表は、最初がJAB認定の認証機関の分で、そのあとにJABから認定されていない認証機関の分が掲載されている。ただし、JAB認定の認証機関の件数だからといって、すべてがJAB認定の適合組織(認証書にJABのロゴマークが入っている組織)の件数であるとは限らない。

たとえば、ムーディー・インターナショナル サーティフィケーション株式会社は、一覧表では、QMS(ISO 9001)の認証件数が3,701件となっているが、現在のJAB適合のISO 9001の認証件数は32件である。つまり、残りの認証件数については他国の認定機関の適合組織件数ということになる。JABがここで発表している「JAB認定」というのは、あくまで「機関認定」であって、「JAB適合組織件数」のことではない。

JAB認定の認証機関による、JAB適合組織件数を知りたい方は、例えばQMSの場合はこちらをクリックすれば最新情報が入手できる。

この一覧表で使用されている用語の意味は下記の通り。
QMS: JIS Q 9001 (ISO 9001) 品質マネジメントシステム      
EMS: JIS Q 14001 (ISO 14001) 環境マネジメントシステム
ISMS: JIS Q 27001 (ISO/IEC 27001) 情報セキュリティマネジメントシステム
FSMS: ISO 22000 食品安全マネジメントシステム
AS-QMS: JIS Q 9100 航空宇宙品質マネジメントシステム
TL-QMS: TL 9000 電気通信品質マネジメントシステム
MD-QMS: JIS Q 13485 (ISO 13485) 医療機器品質マネジメントシステム

JABH22_6.jpg

JAB新理事長に久米均さん!

kume.jpg本日付けで日本適合性認定協会(JAB)の新理事長に久米均さんが就任した。これまでJABの理事長といえば超大手企業会長で非ISO関係者が歴任していたが、ようやくISO認証制度の構築・運営に尽力して来られた人物に番が回ってきた。嬉しい限りだ。

久米さんとはじめてお会いしたのは1993年11月17日。私がまだ某新聞社の編集マンだった頃だ。当時の日記にこう書いている。

「ついにやった! ISO 9000シリーズにおける日本最高の権威=東大・久米均教授のインタビューだ。久米教授は、少しもいばらない。気さくな人で、話す内容も平明で、かつユーモアのある比喩を連発する人だった。感動である」


ISO・標準関係のご経歴は下記の通り。
ISO/TC176日本代表(1981〜2001年)
日本工業標準調査会ISO部会長(1991〜1996年)
日本品質管理学会会長(1994〜1995年)
日本適合性認定協会品質認定委員会委員長(1993〜2000年)

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野末陳平さんの言葉

安倍晋太郎さんが亡くなった年に、某メーカー主催の講演会で野末陳平さんの話を聴いたことがある。1時間ほどの講演だったが、ある言葉だけ、いまだに記憶に残っている。
「安倍さんがね、飯食ったあと、人前で自分の薬袋をテーブルに広げて、飲むようになったんだよ。これを、やっちゃあ、いけませんよ」

ISO審査を取材で立ち会うことがある。審査員は50〜60歳代の方々が多い。昼食を済ませると、おもむろに鞄から薬を出してきて、飲む。そういう場面を結構見る。昼食はたいてい、受審組織の方々と一緒に食べる。彼らは、審査員が薬を飲むのを、笑顔のままじっと見ている。

「これを、やっちゃあ、いけませんよ」
人前で薬を飲む人を見ると、この言葉を思い出す。
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「SSM」と言えばダイキン

「なぜなぜ5回」と言えばトヨタ、「SSM」と言えばダイキン。個人的にはそう思っている。そのダイキン工業のSSMを陣頭指揮で引っ張ってきた岡田慎也さん(同社常務、空調生産本部副本部長、滋賀製作所長)が9月3日、日科技連主催のシンポで基調講演(東京会場)をする。聞かねば。

SSM(ストレス・ストレングス・モデル:不具合発生のメカニズムを未然防止に活用するための知識構造モデル)は、あるライン、ある製品、ある機能だけで導入して使うこともできるし、事業部、工場、さらに全社にまで展開して使うこともできる。前者の好例が日産自動車パワートレイン開発本部だ。部品の共通性が高く、設計検討の頻度が多い「締結・シール機能」に絞ってSSMを導入している。一方、後者の好例はダイキン工業滋賀製作所(ルームエアコン工場)だろう。この工場は、5年前にSSM開発者・田村泰彦さんに出会って以来、SSMに没頭している。最初は工場内の1チームに適用して始めたのだが、やがて商品関連全部門に導入することになり、ついに業務改革の柱としてSSMを位置付けるまでになった。

SSMの最大の特徴は、不具合情報を「原因→結果」の最小ユニットに分解し、それを必要な分だけ組み合わせて再利用するという仕組みにある。この最小ユニットをSSMでは「分節」と呼んでいるのだが、取り組み当初、ダイキン工業では分節の数を成果指標に掲げていた。つまり、分節数が増えると、社内で「えらい!」と評価されるわけである。これには訳がある。「分節数が100件を超えたあたりから、他の不具合モードとの関係が見え始めます。因果連鎖をどんどん書き出していくことができるようになり、取り組んでいる側がその効果と可能性に覚醒し、俄然やる気が起こってくるのです」(岡田さん)

100分節を超えるとサプライズが起きる。だから、どのチームも100分節作れるまで頑張ろう。SSMが社内に馴染むまでは、これが指標になった。非常に分かりやすい定量目標である。

工場内のいろんなチームがこの目標に取り組んだ。原因→結果のつながりにやたら理屈を付けて議論ばかりしたがるチームは、100まで行くのに時間がかかる。すると、途中でだんだん気力がうせてくる。一方、とにかく100分節を達成することに邁進したチームは、すぐに100まで到達し、そこで覚醒を経験して、もっとSSMにはまるようになる。チームによって格差が出たそうだ。

こんな話を聞くと、学生時代を思い出す。「とにかく小説でもエッセイでもいいから、英語の単行本を1冊読み通してみろ」「この分厚い『チャート式 数学』の参考書を1冊全部やり通せ」とかを、学校の先生に言われたことはないだろうか。理屈はよく分からないが、実際最後までやり通してみると、急に視野が開けてその分野が分かるようになり、自分が賢くなったような気分になる。ある閾値を超えると効果が出る勉強法なのだろう。「100分節」は、ダイキン工業にとって、SSMの閾値だったのだ。

勉強と言えば、自分の勉強部屋などに、スローガンとか計画表とかを貼り付けて、自分を鼓舞させた経験はないだろうか。ダイキン工業では、SSM活動でこれをやっていた。チームごとに、方針や活動計画や分節数の進捗度合いなどを表やグラフなどにして「SSM活動板」と言われる掲示板に貼り出していた。これもヤル気をそそる手法だと思う。

このようなチームごとの取り組みは、いつまでもチームごとに分散したままではなかった。例えば、電気部品であるリモコンの筐体部分と、構造部品であるエアコンのグリルとは、部品としては異なるが、樹脂成形として共通の作業工程を持っているので、過去の不具合事例でも共通の要素を持っている。それらの要素は、SSMをやることによって構造化された知識として整理され、それが構造のための樹脂設計や部品の配置設計に反映されることになる。電気部品チームと構造部品チームのSSMがマージするわけである。

このように他部署と分節がつながり出すことを、ダイキン工業では「知識のジャンプ」と呼んでいる。このジャンプは、SSMを商品に関わる全部門に展開すれば、全社部門間でジャンプが起きる。さらに、海外売上比率が6割を占めている会社なのだから、SSMを日本にとどめず、英語を使って海外にも展開すべきだろう。そうすれば世界規模でジャンプが起きる。そんな議論が、私が取材した当時の2008年10月には行われていた。今のダイキン工業のSSMはどこまで進んでいるだろう? 岡田さんの話が楽しみだ。
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